■ 呼び名の魔法 ■
 ※ 2003年12月~2004年6月掲載 沖縄タイムス教育コラム「どんぐりころころ」

「目覚ましが鳴っても起きない、試験前なのに言われるまで勉強しない…」。

子供についての要望は、
「もっとしっかりしてほしい」という共通の思いのようです。
そんな相談を受けた時、私が必ずうかがうことがあります。

「皆さんは、子供さんを何と呼んでいますか?」。

あるお母さんが、長男については「お兄ちゃん」とコメント、
そして、末っ子については「チビがねぇ~」と話されるのを聞いた時、
私はふと、過去のビックリ体験を思い出しました。
「うちのチビがね」と時々聞いていた知人宅へ、初めて行った時のこと。
会ってみると、その「チビ」さん、
実は私より長身の高校生だったのでした!

そこで私は、今回のお子さんの年齢を尋ねてみると
―「十七歳です」。
こちらも大きなチビさん。
すると「実は、うちも…」と「チビ」は大人気の呼び名のようでした。

こうして私が「呼び名」にこだわるのには、理由があります。
私は小さい頃から、両親に「さん」付けで呼ばれて育ちました。

「紀子チャン!と呼ぶと、何だかペットのようで…
自分と別の人格をもった人間として、向き合いたいと思ったから」
という母の考えと工夫からでした。
友達には不思議がられましたが、
叱られる時や「お昼は何食べたい?」と聞かれる時でも
「紀子さん」と呼ばれると、一人前に尊重されているという実感があり、
子供なりに、自分の主張・責任感をもとうと思うようになっていました。

そんな私にとって、「チビ」と呼んでいながら
「しっかり自立した意識をもって。」という大人の希望には、
違和感があったのでした。

何気なく使っている「呼び名」には、呼ぶ側・呼ばれる側に、
思っている以上の「影響力・効果」があるのではないでしょうか?
呼び方によって、両者の気持ち・意識は変わります。
それが、呼び名の魔法です。

「呼ばれて嬉しくなる呼び名…あなたは、どうですか?」

「子供さんに聞いたことはありますか?」

「頑張れ!」の代わりに「何と呼ばれたら、一番頑張れる?」。

チビが大きくなった時、ちょっと聞いてみませんか?

・註・
原稿は、当時のままで掲載しておりますが、現在は「コーチとして」ではなく
「コーチングの手法も活かしつつ」哲楽家として活動しています。
ご了承下さい。

Copyright(c) 2014 紀々 All Rights Reserved.
Design by http://f-tpl.com