紀々が出会ったプロフェッショナルを、紀々の視点でご紹介する…「社外報!
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◆ … ・ file.18 :取材日 2013年6月25日 ・ … ◆

八木 正晴(やぎ・まさはる)

※ 取材に同席させて頂いたスタッフと談笑中のひとコマ。

職業 : 「浦添総合病院 救命救急センター」 センター長
この道 : 19年

忘れられない取材先。
八木先生と浦添総合病院救命救急センターは、
私にとって、そんな貴重な存在です。

私が一番最初にライターとしてデビューしたのが、
月刊ドクターズプラザ 2012年11月号 巻頭インタビュー「離島医療を守るドクターヘリ」


※ 月刊ドクターズプラザに掲載された一枚。
レントゲン画像を見ながらディスカッションの風景です。

編集長からご連絡があった取材先は、浦添総合病院。
インタビューを受けて下さることになった八木先生は、
その3ケ月ほど前に、浦添総合病院で私の講演を聞いて下さり
懇親会でご挨拶をした方でした。
思いがけない再会に驚きとうれしさを感じつつ、
心臓が飛び出しそうなくらい緊張していたことを
今でもハッキリとした感覚で覚えています。

「社外報!」をはじめるきっかけとなる出会いでもあった
八木先生に…「社外報!」にもご登場頂けることになりました。
浦添総合病院にて、あらためてお話うかがいます!


※ 最初の取材にうかがった時の…記念の一枚。

◇ 紀々
もともとドクターヘリに乗りたいというお気持ちが強かったのですか?

八木先生
興味はありましたが、
そんなに「ヘリに乗りたい!」ということではありませんでした。
実は……乗り物酔いがひどいんです。
ドクターヘリは距離も長いというのもあります。
また、ドクターカーではそんなに処置がないのですが、
ヘリの場合は記録もするし処置もあるし……なので、結構酔ってしまいます。
車と違って、ヘリは簡単には途中で降りることもできないですし、そこは大変です。
今は、月に1回くらい担当しています。

◇ 紀々
そういえば、フライトナースの方にお会いした時にも
「実は高所恐怖症で、観覧車にも乗れない」とおっしゃっていました。
救助隊の方からも「閉所恐怖症だけれど、マンホールの中でも大丈夫!」
というお話を聞いて、驚いたことがあります。

八木先生
そういうのは……克服する、というよりも慣れるものなのだと思います。
海上保安庁の人も「最初気持ち悪いけど、慣れる」と言っていました。
仕事として訓練などで毎日毎日繰り返しているから、なのでしょうね。
私のように、月に何回かという程度では…
催眠術にでもかからない限り難しいんじゃないかな。
かといって私はとても疑い深いので、催眠術や暗示にはかかりにくいのですが。(笑)


※ 初めてうかがった読谷のヘリポートにて。あたたかく迎えて頂きました!

◇ 紀々
救急の現場では、判断・決断などスピードが求められると思うのですが
八木先生は、もともと決断は早いのですか?

八木先生
仕事では、即決即断。
そうでないと、患者さんの命に関わりますから。
でも、普段はそうでもありません。
出かける時に「どこにいく?」ということなどは、けっこう他人に依存しているかも。(笑)

◇ 紀々
それは意外です!
救命救急の現場は、緊張感が高いというイメージがありますが…。

八木先生
そうですね。
でも、ずっと張りつめているのも良くないので、メリハリが大事だと思います。
ただ私の場合は、オンオフを特には意識していません。
多分、家にも持ち込んでいるのではないかと思います。

◇ 紀々
何か、気分転換のためになさっていること・趣味などはありますか?
お休みの日は、すっかりオフになっているのでしょうか、
それとも…例えばニュースや救急車を見たら気になるものですか?

八木先生
趣味を持ちたいとは思っているのですが、なかなかですね。
休みの日は、オフになっています。
でも、救急車のサイレンが鳴ったら気になります。
渋滞していたら「交通事故かな」と思ったり。
それは、職業病ですね。
あと、事故のニュースなどを見たら……
「ドクターカーは出たのかなぁ」と思ったりもします。
あ、ということはオフになっていないってことか。(笑)


※ 月刊ドクターズプラザに掲載された一枚。
ドクターカーとドクターカーのスタッフの皆さん。仲が良い雰囲気が印象的でした!

◇ 紀々
救急救命センターを舞台にしたカッコ良いドラマなどがありますが、
プロの目から見たらどうなのでしょうか?

八木先生
あまり見ないのですが……。
最近のものは、以前に比べると現実味を帯びていますね。
でも「あまりにも理想すぎて」というのが正直な印象かな。
見てて恥ずかしい感じです。(笑)
あんな風にやれたらいいけど無理だよね、
あんまりこうやられると現場が困るよね、というのはありますよ。(笑)


※ ヘリポートは読谷村にあり、ドクターヘリとスタッフの皆さんはここに待機しています。
フライトドクター・フライトナースのお2人と、健康サポーターえむぞぅくんの記念写真。
月刊ドクターズプラザの編集長と一緒に、ご挨拶にうかがいました。

◇ 紀々
ドクターヘリ・ドクターカーのスタッフの皆さんの
明るさ・元気・チーム力がとても印象的なのですが…
それは、そういう教育があるのか、それとも、
そういう方々が集まっていらっしゃるのですか?

八木先生
あんまり考えたことはありませんが…
そう言われてみると、大人しい人というよりは
自ら手を挙げる・ハッキリ意見を言うタイプが多いですね。
そういう人が、救急を選ぶのかもしれません。

◇ 紀々
専門ごとに、キャラクターに特徴もありますか?

八木先生
ルーティーンワークが苦手で、変化があることでやりがいを感じる人は、
救急に多いでしょうね。
私も、その一人です。
整形外科や精神科の先生は、話を聞くのが上手な人が多いような気がします。
コミュニケーションが苦手な人は麻酔科を選ぶなど、傾向がありますよ。

◇ 紀々
緊迫した中で冷静に判断し、いつも力を発揮するためにどうしたらいいか
という声は、様々な現場で耳にするのですが、まさに救命救急の現場は
それが最も求められるところだと思います。
しかも、失敗が許されない。
何か秘訣・教育方法などはあるのでしょうか?

八木先生
特別な教育があったという記憶はないのですが……。
基本的に私が「これは間違いない!」と思っているのは“経験”です。
色々なシチュエーションを経験すること。
どんなに自分が忙しさや体調不良などがあっても、
重症な患者さんが来たら、なるべく第一線で一緒に診る・経験する……
そこに身を置くことを大事にしています。
教科書ではいくらでも勉強はできますが、実際は、もっと様々な状況がありますし、
「この患者さんは、まずいな」という“感覚”は、教科書ではわかりませんから。

患者さんと向き合う経験の一方で、
点滴をとる・採血をする・気管挿管をするなど
日常にやることが多い処置に関しては、
誰よりもうまくなるつもりで練習していました。
どんな状況であっても、
最終的には自分がやらなければいけないという覚悟で常にいます。

今、何人かが処置をしている場面でも
「もし今、あいつが失敗したら次は自分はココだな」という風に、
いつも“次のこと・その次のこと”を考えながらやっています。
冷静というよりは「次の策」を考えていて……
慌てていられない、という感じでしょうか。

本人としては、慌てているつもりではあるのですが。(笑)
スピードを早くしてこなすことを心がけているので、
それが“慌てている”という感じを消しているのかなぁ。
う~ん……あまり考えたことがないので、よくわからないですね。


※ あたたかさと熱さの持ち主……語って下さる表情からも、そんな印象を受けます。

◇ 紀々
「準備ができない」という緊張感について、お聞かせ下さい。
舞台に立つ仕事が長い私の場合、緊張は今でもありますが、
台本もあるしリハーサルもできるので、その意味では、ある程度先は見えています。
でも、救助に向かう時や救急の患者さんを迎える時は
「その時になるまで見えない・わからない」……その時の準備というのは?

八木先生
結局は「パターン分析」なんです。
病気とか状態は色々な組み合わせがありますが、
どんな状況であっても、私たちがやれることは限界がある。
だから「次こうなったらこうしよう」というのは、ある程度は想定しています。
ただ、それを他人と共有できないのは難点です。
「完全に血圧がいくつになったらこうしよう」と言い切れるものでもなく
タイミングなど微妙な違い・感覚的なものもあるので、明確に言葉にしづらい。

その点、最近の若い先生方はそのあたりは上手ですね。
「こうなったらこうしよう」と、言葉で準備しているという印象を受けます。
そのあたりは、今の教育を受けた先生方と私との違いを感じます。


※ 笑顔と真剣な表情…ここにもメリハリを感じます。

◇ 紀々
救命救急センターの皆さんは、ひと言でいうと……
「仲良し・まとまっている感」というのが印象的なのですが。

八木先生
そうですね、仲は良いですよ。
それは、お互いがお互いの力量を知っていて信頼しているからではないでしょうか。
「誰が・何が得意か」を、何となくみんな知っているということです。
例えば「外傷の患者さんの場合は、Aさんに」とか……
「△○の病気なんだけど、こうなったから、ちょっとBさんを呼ぼう」ということが、できる。

◇ 紀々
何となく、オーケストラに似ていますね。
楽器は一応決まっているから、この部分はこの人に……という感じで。

八木先生
そうですね。
オーケストラより楽器の種類はちょっと少なめだけどね。
似た系統の楽器がいくつか集まっている、という感じでしょうか。

◇ 紀々
木管五重奏といったイメージですね。

八木先生
そうそう。
うちの場合は外科医はいなくて、
内科系救急医が集まっているので、系統は似ていますから……
その中で、楽器の大きさや長さが違うという感じかな。

◇ 紀々
コミュニケーションを良くするために何かなさっていることは?

八木先生
毎日朝・夕の回診の時に、患者さんの治療方針や考え方などについて
ディスカッションをしています。
そこが自己主張の出番でもあります。
「ここは外せない」ということさえ外していなければ、大きなズレは起こりません。

◇ 紀々
飲みニケーションもありますか?

八木先生
う~ん……私は、あまり飲めないのですが、そんなに頻繁にではないと思います。


※ 編集長とえむぞぅくんと一緒に、浦添総合病院にうかがいました。
研修医・救急救命士の皆さんと、ドクターカーと一緒に♪
やっぱり、笑顔が印象的です。

◇ 紀々
救命救急のプロにとって一番大事なことをひとつ……と言われると?

八木先生
一番……ですか、難しいなぁ。
知識も必要ではあるけれど、一番と言われるとそうではないし……。

◇ 紀々
例えば、人を採用する時に一番大切なポイントがあるとしたら?

八木先生
採用するとしたら、かぁ……。

(しばし沈黙)

「想像力」かな。

「これをしたら、この患者さんがこうなるんじゃないか」
ということを、どこまで現実的に想像できるか。
想像するためには、もちろん知識と経験そして技術もなくてはいけません。
想像力がないと「悪くなる」ことも想像できないし。
見えない血管や神経の様子も、そうです。
この針をこう刺したらここに当たる、ということだって
見えないところでやるわけですから。
想像力がない人は、いい医療者にはなれないと思います。
それは、研修医にもよく言っています。
あ、最近は言わずにすんでいるかな。(笑)

◇ 紀々
「想像力」ですか。
意外ですが、言われてみると……本当に、そうですね。

八木先生
知識は技術はもちろん必要ですが、「一番」と言われたら、ちょっと違うかなと。
その知識・技術を“どう使うか”の方が大事だと思います。
テストができるのが必ずしもいい医者でもないですからね。

◇ 紀々
最後に。
これを読んで下さる方々に、伝えたいことはありますか?

八木先生
沖縄県の補助金でドクターヘリを運用しているので、
その活動にご理解・ご協力頂けたらありがたいです。
金銭的なご協力ではなく、
どうしても出てしまう騒音の問題についてご理解頂けたらと。
これまでも、このことが
ヘリポートを増やす上での障害にもなってしまっていたので。
将来的に新しく病院を移転する時には、
病院にヘリポートを作りたいと思っていますが、
浦添市は住宅地が多いので、皆さんのご理解・ご協力は欠かせない要素です。
ぜひ、よろしくお願いします。

info
浦添総合病院 公式サイト
沖縄県ドクターヘリBLOG
浦添総合病院-救命救急センター救急総合診療科facebookページ

八木先生にご出演頂いたインタビューラジオ【ヘルスケアプランナー 紀々が聴く!】より。
bg
130909紀々が聴く G:八木正晴/浦添総合病院 救命救急センター センター長【前編】
2013年9月9日 更新
ダウンロード
タイフーンfm

bg
130923紀々が聴く G:八木正晴/浦添総合病院 救命救急センター センター長【後編】
2013年9月23日 更新
ダウンロード
タイフーンfm


紀々の哲楽メモ

今だから言えること……。
私にとって初めてのライターとしてのインタビューと執筆は、
本当に大苦戦!
何度も修正のやりとりが続き、そのたびに
八木先生にも、ご確認・加筆頂くことになり、
あまりに申し訳ないのと自分が情けないのとで、胃が痛くなりました。
実は、電話番号や時計で「8」の数字を見るだけでも
「八木先生」を思い出して心苦しくなったほど。(笑)
本当に、お世話になりました。

もう二度とライターのお仕事はないと思っていたところに、
思いがけずライターのチャンスが。
思いがけず頂いた貴重なチャンス……
「もっと良いインタビュアーになりたい!」と思い立ち、
自主練習として始めることにしたのが、この「社外報!」でした。

ちょうど手持ちのカメラが不調になったこともあり、
写真の先生にお願いして、
ご指導の前に、カメラ選びから相談にのって頂きました。

そんな「社外報!」で、
八木先生にもう一度インタビュー機会を頂けたことは、
とても感激でした。

最初の取材のお話があった時、私は、
NPOが運用しているものとは別に
「沖縄県のドクターヘリ」があることを初めて知りました。
ドクターカーについては…実は、偶然にも
取材の少し前に、講師としてうかがった
浦添総合病院でお話を聞いていました。
まさか、こんな風にご縁がつながっていくとは夢にも思わずに。

救命救急の現場が、消防と深い関わりがあるということも
初めて知りました。
初めてづくしで執筆に大苦戦していた頃…
かかってきた1本の電話が「那覇市消防本部」から。
「消防職員意見発表会」の沖縄大会での審査員のご依頼でした。
沖縄で活動する消防士さんの意見発表を聞きながら、
インタビューでうかがっていたお話とつながる不思議を感じていました。

その後、沖縄県代表となった消防士さんのコーチ役のご依頼があり、
消防本部へたびたび足を運ぶようになり、すっかり身近な存在に。
「社外報!」一番最初のインタビューが高度救助隊の屋良隊長になったのも、
そんなご縁からでした。
浦添総合病院で定期開催されている「消防症例検討会」では、
九州大会に出場する消防士:与儀真也さんの発表の場も頂きました。

  八木先生のお話をうかがっていると、
「もっと出来ること・いい方法はないか」を
常に考え振り返る姿勢が、とても印象的でした。
お医者さんは病院にいるというイメージだったのですが、
必要な場合は、消防の方々と一緒に再び現場に行って
振り返ることもあるとうかがい、驚きました。

そこにあるのは「次の時のために」という視点。
感激する私に、先生は
「でもね、次も同じ状況かというとそうじゃないことが多いけど。」と、サラリ。
この言葉とプロならではのカッコよさは、屋良隊長と同じでした。

必要な人が必要な処置を受けられるために、
私たちは、自分の健康をもっと意識し大切にしなくてはいけない。

先生方のお話をうかがう中で、あらためてそう思いました。
私たちの生命を守って下さっているプロフェッショナルの方々が
安心・安全に活動できる状況や志を、私たちも守る努力をしなくては!と思うのです。

今の私に、何ができるのか……考えてみた時に、
「小さくても、発信を通じてお伝えすることでは」と思いました。
そんな私の小さな発信が、少しでも
広報と沖縄人の健康づくりへの意識度アップの力となれたら幸せです。

沖縄県のドクターヘリの取り組みについては
月刊ドクターズプラザ 2012年11月号 巻頭インタビュー
「離島医療を守るドクターヘリ」
も、是非ご覧下さい。

これからも、また機会があれば
ドクターヘリやドクターカーについてお話うかがえたらうれしいです。
八木先生はじめ、ご協力下さった関係者の皆さんへ、
心より御礼申し上げます。


※ インタビュー終了後♪




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