紀々が出会ったプロフェッショナルを、紀々の視点でご紹介する…「社外報!
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◆ … ・ file.23 :取材日 2013年7月17日 ・ … ◆

漆間 信宏(うるま・しんこう)

※ 本当に、笑顔の似合うお坊さんです!(studio紀々にて)

職業 : 僧侶
この道 : 14年

岡山から、studio紀々での企画に参加するために
沖縄まで飛んで来て下さるとの連絡を頂いたので…
ぜひ「社外報!」にもご登場をとお願いしたら
とても快く引き受けて下さいました。

「お経に、紀々さんのキーワードの
“笑”という文字は出てくるのかなと思って
ここに来る前に調べてみました。
前から気になっていて…そして、見つけたんです!」



お坊さんならではの、
ステキなお土産に感激でした。

私は、大学が東洋哲学専修だったので
お寺の息子さんが多く、
お坊さんにはかなり親しみをもっていますが…
一般的には、お坊さんは法事など特別な時に
遠くから見かける存在であるようです。
このインタビューで、
「お坊さん」を少し身近に感じて頂けたら…
そんな願いを込めて、お話うかがいました!


◇ 紀々
なんだか、こうして真面目にインタビューなんて…
ちょっと不思議な感じがしますが、
あらためて、お話聞かせて下さい。

漆間さん
はい。
私も、インタビューは初めてです。

◇ 紀々
お坊さんへのインタビューって、
何だか恐れ多い(?)気もしますね。

漆間さん
本当は、お坊さんって
「淋しがり屋」が多いんですよ。
あ、私もです。
基本的には、一人で動いていますし、
法事の席など初めての方々とお会いすることも多く
あまり気さくに話しかけられることはないので。
あと、話しかけにくい感じもあるかもしれませんが…
でも、本当は淋しがり屋さんなので、
是非、話しかけてほしいです。

◇ 紀々
それは…意外!
お坊さんも、普通の人と同じ気持ちなんですね。
もしかしたら、普通の人よりも
淋しがり度は高いかも。(笑)

漆間さん
一人で、いろんなことをこなすんですよ。
お経をあげたり…というプレイヤーの立場から、
スケジュール管理をするという点ではマネージャーであり、
小物などつくることもあるので
大道具・小道具さんのような役割も。
実は、お坊さんの仕事は
「ほぼ準備である」と言えるほど。
裏方の準備も大事で、全部自分でやっています。

◇ 紀々
表舞台と舞台裏…
割合としては、どんな感じなのでしょうか?

漆間さん
1年365日のうち、
15分の1が「表」でしょうか…。
舞台裏の方がずっと多いですね。
表舞台は、氷山の一角なんですよ。

◇ 紀々
「僧侶」という職業を、ひと言で表すと…?

漆間さん
「自分が仏様を信じ、相手にも仏様を信じて頂く職業」です。
う~ん…職業というよりも「生き方」でしょうか。
そこが、一般の職業とは違う気がします。
定年もありませんし。

◇ 紀々
なるほど。
最高齢のお坊さんは、何歳なのですか?

漆間さん
私が知っている範囲での最高齢の方は…
「101歳」です。

◇ 紀々
すごい!

漆間さん
音楽系の指導をして下さっているのですが、
とても耳が良いので、1音違っても
すぐにわかっちゃいます。(笑)
口を開けていないから、音が下がる。
「入れ歯が飛ぶくらいに、口を開けて!」と
アドバイス頂きました。
あ、でも私は…入れ歯じゃないですが。(笑)
101歳の方ならではの説得力があります。

◇ 紀々
それは、説得力ありますね。
でも、もし飛んで来ちゃったら…私、ビックリしちゃいます。(笑)

 
※ お経を唱えながらの舞も見せて下さいました♪

◇ 紀々
相手にも信じてもらうために、大事にしていることは?

漆間さん
自分がまず仏様を信じることです。
よく紀々さんも
「社員の皆さんが笑顔でなければ、
お客さまも笑顔になれない」とおっしゃっていますが、
それに近い感じだと思います。
こちらが信じていなければ、伝わらない。
演技ではなく「にじみ出て」いくものだと思うのです。

◇ 紀々
お坊さんには、やっぱり聞きにくいなぁ。(笑)
なんとなく、ぶっちゃけてはいけない気がしてしまいます。

漆間さん
え、そうですか?

◇ 紀々
「大変なことは何ですか?」と聞いたら、
「大変と思うということは修行が足りないということだから…」とか
「大変なんて思ってはいけません!」
なんてなっちゃわないかしら、と思ったりして。
この質問…聞いてもいいですか?

漆間さん
はい、大丈夫ですよ。(笑)
大変なのは…
「その方のために時間をかけたいけれど、
時間に制限があるところ」です。
例えばお盆など、皆さんのところにまわって行くのですが、
皆さん同じ日なので。

◇ 紀々
年に一度…共通の日ですね。
家庭訪問みたい!

漆間さん
そんな感じです。
皆さんは、私一人を待っていて下さるのですが
私は、たくさんの方のところにうかがうので…
でも、「たくさんの中のひとつ」として見てはいけないと思っています。
なので、じっくり向かい合っていきたいと思うのですが、
どうしても限られた時間なので、
それが難しいところです。

◇ 紀々
時間の約束は、できるのですか?

漆間さん
それが、なかなか難しいです。
ただ、田舎なので、近所の皆さんが
「さっきあの辺りをお坊さんが歩いていたから
○時頃になるんじゃない?」と
風のウワサで聞いて楽しみにしていて下さる
というのがあります。
ありがたいです。

◇ 紀々
「想い」があるが故の大変さなのですね。

漆間さん
はい。

◇ 紀々
お坊さんにとって「プロとしての幸せ」というのは何ですか?

漆間さん
説明がとても難しいのですが…
「亡くなる」ということは悲しい・淋しいことなのですが、
私のところの浄土宗では、
教えの中では「よろこぶ」ことなんです。
極楽に行くことができた、という点では
よろこぶべきことだと。

◇ 紀々
なるほど…。
「悲しい・淋しい」という感情ももちろんありつつ、
ではあるのですね。

漆間さん
そうですね。

◇ 紀々
お別れに対する「もうひとつの見方」
という気がします。
そう考えると、ちょっとわかるというか…。
実際、身近な人が亡くなったら
やっぱりそうは思えないかもしれないですが。


※ 漆間さんのお話は、和やか・軽やか…そしてわかりやすかったです♪

漆間さん
悲しさいっぱいの中で、それでも
どん底まではいかずに
「それだけではないですよ」という見方を
提示することができたらと思っています。

◇ 紀々
それこそ「風穴があく」ということですね。

漆間さん
はい。
それができるのって、 お通夜やお葬式の…ほんのちょっとの時間なんですよ。
10分あるかないかといった、わずかな時間。
その中で、何も知らない方々もいらっしゃるところで
入っていかなければいけない大変さもあります。

◇ 紀々
いろんな気持ち・目線がありそうですね。

漆間さん
人によっては「あの若いお坊さん、何言ってるんだ」と
思われることもあるでしょうし。

◇ 紀々
あ、それは私も経験あります!
「若さ」が辛さになる経験。

漆間さん
そういう見方をする人の場合、きっと
私よりも60代以上のお坊さんが言った方が
しっくりくるのかもしれないし。

◇ 紀々
わかります。
私も、講演などで
「若い姉ちゃんに何がわかる!」と言われた時に
あぁ、白髪だったらよかったのにと思ったことがあります。(笑)

漆間さん
なので、紀々さんのコラムなどを読んだ時に、
「辛い!」と同じ気持ちになっていました。
ちょっと話がそれましたが…「幸せを感じる時」について。
お葬式当日ではありませんが、しばらく時がたってから
「あの時、あんな風に教えてもらってよかった」と
言ってもらえた時は、うれしいです。


※ 30's仲間の会での一コマ。みんな真剣に見入ってしまいました!

◇ 紀々
はじめての方々の前に、
しかもお通夜やお葬式という特殊な場で
真ん中に入っていく…というのがお仕事ですよね。
気持ちとしては、どんな感じなのですか?

漆間さん
こわごわ、という気持ちがあることもありますよ。
でも、そうやってドアを開けるわけにもいきませんから。
それこそ、お化け屋敷の中を
こわごわ進んでいくという感覚の時だってあります。
そんな状況の中で、
少しでもスムーズに進められるために
日頃の「準備」部門が大事になるわけです。
お経の本を読んで、より理解を深め自分のものにしたり、
日頃の人間関係も大切にしています。
何もせずにおしゃべりしているように見えても、
実はそのコミュニケーションが、
「いざという時」に入れてもらえるかどうかにつながりますから。

◇ 紀々
私の舞台と同じですね!
「日頃」がカギ。

漆間さん
亡くなった方についてのお話ができるのも、
生前の関わりがあるからこそですし。

◇ 紀々
難しく感じることはありますか?

漆間さん
「正解」がない、というところでしょうか。
あれでよかったんだろうかと思うこともありますが、
でも、あれが精一杯だったと思うのです。
ほぼ予告もなく、同じ場合もありませんし。

◇ 紀々
プロとして心がけていることは、何かありますか?

漆間さん
元気を大切にするために、スケジュールを組む時に
1週間に1回は静かにする日を作っています。

◇ 紀々
お坊さんのことは、一般の人にとって
知らないことがいっぱいだと思うので…
この機会に、何か伝えたいことはありますか?

漆間さん
お坊さんは「淋しがり屋」だということです。
もっと話しかけてほしいと思っています。

◇ 紀々
それは、本当に意外です。(笑)
何となく話しかけにくい気がするのですが、
話しかけてもいいんですか?

漆間さん
世代によって違いがあるかもしれませんが、
若いお坊さんは、みんなが思っているほど
「距離をおかなくてはいけない」ということはないはずです。

◇ 紀々
じゃぁ、法事の時などに
わからないことを聞いてもいいんですか?

漆間さん
はい、いいと思います。
わからなかったら、私の場合は「宿題にさせて下さい」と
お願いして、後日、調べてまたお話に行っています。

◇ 紀々
私も、漆間さんに聞きたいこといっぱいあるのですが
止まらなくなっちゃいそうなので…
今日はこのあたりで。(笑)
お坊さんが淋しがり屋さんだということ、
みなさんにもお伝えしますね。
どうもありがとうございました!


・ ・ ・

紀々の哲楽メモ

「岡山から来た友人が、紀々さんの本を購入したいとのことで…」

高校の後輩:Kくんから連絡をもらって、スタジオでお迎えしたのが
漆間さんとの最初の出会いでした。
Kくんの部屋で私の本を読んでくれたそうです。
「書いた人は、きっと60歳くらいの人だと勝手に想像していました」
とのこと。(笑)

笑顔の似合うお坊さん。

それが、漆間さんの第一印象で…今も変わりません。

スタジオで龍神伝説を演奏した時には、
感激して手を合わせて聴いて下さっていました。
「私に何かがあった時には、漆間さん、よろしくね!」と
冗談半分で言った時には「そんなこと言わないで下さい!」
と涙目になっていた漆間さん。
感激度の高さとあったかい心に、元気を頂いています。

「死」を考えるということは「生きること」を考えること。
私は、そう思っています。

それを、お坊さんと一緒に哲楽できるというのは
プロの視点も加わって、とても実り多いと感じます。
法事の時にちょっとだけ背中を見るだけ…なんて、
もったいない!

もっと、日常に「お坊さんと語る場」があったらいいのに
と思っていましたが、今回の漆間さんのインタビューで
「お坊さんは淋しがり屋さん」であることを聞き
あらためて、そう思いました。


※ 普段着のお坊さん☆

お坊さんもまた、異業種交流を望んでいることも知り
ますます楽しくなりました。
その橋渡しができればと思います。

お唱えの舞を見せて頂いての感想は…
「お経もアートだ!」というワクワク感。
アートは祈りから生まれたのでは、ということも
あらためて感じました。
いつか、ピアノで共演できたらという夢の種も生まれました。

漆間さん、貴重な沖縄でのお時間を…
本当にありがとうございました!




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